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Review

 
◆【独を引き受け、私と他者に出会い直せ!】


 
 主人公のウェンディは、いわゆるスクールカースト底辺ぼっち(※ただし不美人ではない)で問題児扱いされている17歳の高校生、だけど実は、人間社会にチェンジリング(取り替え子)として育てられたトリル(トロール)の国のお姫様。
 
 ここで、「はいはい、少女向けロマンスでよくある、実は異世界(異種・異国)の姫系シンデレラストーリーね……」とひとりごちて本を閉じてしまったら、あなたはきっと大きな損失を受けるだろう。
 
 6歳の誕生日に育ての母に殺されかけ、溺愛してくれる兄と叔母に支えられていたとはいえ、問題児としてハイスクールを転々とする孤独な生活を送っていたウェンディは、生まれ故郷のトリルの国に行ったからといってトントン拍子にリア充になれるわけではない。
 トリルの国の女王である実の母親エローラとも打ち解けられないし、気になるイケメン・フィンは身分も違う上に仕事第一であるし、なによりトリルの国には陰謀や秘密が渦巻いていて、とにかく問題は山積み!なのである。
 
 この物語が古典的少女向けロマンスの形式をとりつつ新鮮で爽快なのは、どんな状況であっても、ウェンディは決して古典のプリンセスのように自らの境遇に従順に従わない上、彼女には現代日本の少女向けヒロインたちのように、共感によって支えてくれる仲間もいないからである。
 彼女はどこに行ってもぼっちなのだ。
 
 しかし、孤独であることと不幸であることは、決してイコールではない。不幸はむしろ、従順による思考不能や、共感による身動きの取れなさからもたらされることの方が多いのではないだろうか。
 ジェンダーギャップ指数世界104位の日本において、「従順さと共感力」が、「女性ならではの」という枕詞とともに賞賛という名の抑圧として女性たちを苦しめていることは、各種「女性活用政策」を見るまでもなくわかるだろう。
 
 ウェンディのように、自分で考えて自分のために行動する。
 悪く言えば「利己主義」だ。
 
 だけどきっと、私たちは、孤独を引き受けなければ、自己と他者の境界線に気づくことはできないだろうし、自分自身のことも他人のことも、本当の意味で理解することはできないだろう。
 
 さあ、ウェンディとともに、孤独を引き受け、私と他者に出会い直せ!
 
 

著者名:柴田英里
2011年東京芸術大学大学院美術研究科彫刻領域修了。
サイボーグ・フェミニズムとクィア・スタディーズをベースに、彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性の再興、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに、美術家・文筆家として活動している。
【コラム連載】トゥルーウーマン・ショー(ウェブサイトmessyにて、毎週木曜日更新)
 
 
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  • スウィッチ

    著:アマンダ・ホッキング (著)
      裕木俊一 (翻訳)

    定価 500円(税抜)

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